コミック・イズ・ノット・デッド!

ginsberg2005-12-27

●島田一志『コミック・イズ・デッド』

古屋兎丸『ショーットカッツ』、西島大介世界の終わりの魔法使い』、『文芸別冊』の編集を担当してきた島田氏の漫画評論+インタビュー本。

漫画を愛してやまない氏の熱きロック調評論はまさに「コミック・イズ・“ノット”・デッド」であることを証明している。

本書は決して「今」の漫画表現、すなわち00年代漫画を語る類のガイド本ではない。単に漫画を愛して止まない一個人が、少年・少女漫画〜売れている作品〜“テヅカ”作品〜近年の音楽もの等など、自由な感覚で自身が感動を覚えた漫画を選出しているだけなのだ。その熱の帯びた解説は「冷めた」「終わった」と批判されることの多くなった漫画界に熱気を注入しているようである。

とはいっても、著者はそもそも漫画が「冷めた」「終わった」等とは思っていないのは、インタビューを読んでも明らかであり、むしろ意識的にロック調の解説を一つの方法論として採択しているのだとも思う。本書は「語ってはいけないこと」に捉われがちな漫画評論の閉塞感をすがすがしく取っ払うべくあえて正面から向かっていった、それ自体が現状の漫画評論に対する批判本でもあるのだ。漫画はただそこにあるだけで、誰かが占有的な眼差しで批評するものではない。今本当に必要な漫画評論本は、こういうものだったのかと考えさせられた。