『ONE PIECE』尾田栄一郎(集英社)について、少し語らせてください

 2005年からの00年代漫画ブーム。なぜこの中で『ONE PIECE』がこれほどまで無視されてしまうのでしょうか? 私がロビン氏やサンジ氏にキャラ萌えしていることはさて置くとしても、やはり納得し難いんです、この状況が。

尾田栄一郎
フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』より

尾田 栄一郎(おだ えいいちろう、1975年1月1日 - )は、熊本県熊本市出身の漫画家。本名同じ。専攻は少年漫画。集英社専属。

東海大学付属第二高等学校在学中に、短編『WANTED!』が『週刊少年ジャンプ』の新人賞の手塚賞に準入選する。
九州東海大学工学部建築学科を中退後、甲斐谷忍徳弘正也和月伸宏のアシスタントを務める。アシスタント時代に描いた読切の海賊漫画『ROMANCE DAWN』が、後の『ONE PIECE』の原型となる。
1997年から『週刊ジャンプ』にて、善良な海賊達の冒険と活躍を描いた怒涛の大河ロマン『ONE PIECE』の連載を開始。人気となっている。

 なぜ『ONE PIECE』がそんなにすごいのかと言うと、まず第一に尾田さんの初の長編であることにまず驚きを隠せない。現在40巻まで上梓されていて、ようやく終盤に入りつつあるのかというところだけど、そのプロット、構成は微塵も揺るがず、冒険物語としての強度を保ち続けており、最初にどれだけ綿密に物語構成が組まれていたのかと思うとただただ圧倒される。

『少年ジャンプ』の超人気作というと、編集部がやめさせてくれないという逸話がありますが、真偽はさておき、少なくとも『ONE PIECE』には、それが微塵も感じられない。例えば過去20巻程前に残された謎に対する回答が、ようやく場と時を変え驚きの結果をもって登場したりと、そのレベルの高さでもかなり楽しませてくれる。しかもその度に、これまで不可視だったワンピ世界が見えてきて、ぐぐぐっと奥行きが拡張されたりもする。(補足:私もその一人ですが、ワンピの謎解きを楽しみにしている人にとって、今の“ロビンちゃん篇”は一番盛り上がっているときではないですか? 先週あたり、ずっと気になっていた空白の歴史の謎に、少し回答されましたね。楽しみすぎて毎週待ちきれません。) 
 普通漫画の特性として、物語の成り行きや、編集部からの助言次第でクライマックスが変わったりということはよく聞く話だけど、もしかすると連載を開始した時点で、尾田さんはある程度人気を予測してあらかじめ大長編の設定で構想していたんじゃないかな、とすら思う。だから、結末も(最期の島ラフテルでかな?)全く予想が出来ないけれど、絶対に楽しませてくれるものを既に用意していてくれるという確信があるので、安心して毎週楽しみにできる。(保守的?……ではありますが。) 
 もう1つ。一つのタイトルのクライマックスのテクニックが非常に上手い。「アラバスタ篇」「空島篇」でも、正義(=ルフィ)と悪(=クロコダイル、=エネル)が読者からすれば間違いなく認識できるのに、(アラバスタ篇における)海軍、(空島篇における、戦士と天使)等、別の意思を持った者達が、各々の目的のために参戦する。それを決して混沌としたままではなく、綺麗に収集されクライマックスを迎えている。
 週刊誌、しかも『少年ジャンプ』で3本柱の1つという現在の漫画界のど真ん中をひた走りながら、「友情、努力、勝利」という縛りを抱えつつ、これだけの揺ぎ無い物語を生成できるのは、恐らく尾田さん以外にはいないと思う。
(揺るいだ『幽遊白書』はグダグダ感が出てからこそが、面白くなったと思っています。問題なし!『HUNTER×HUNTER』も全く問題なし!)
 誰も死なないし、怪我の回復がやたら早い、愛が芽生えない、=リアリティが無い。だから面白くない。・・・なんて、それがどうした! と思う。